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CUDA+GPGPU、C++、C#などのプログラムについての備忘録がわり
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Posted by サンマヤ - 2013.05.11,Sat
普段、学校などで出てくる問題は、たいてい解けるように作られている

ところが、実際の問題となると、解けるかどうか、
いや、答えが存在するかどうかすら分からない。
今回とりあげる本は、
吉田春夫「力学の解ける問題と、解けない問題」
だ。

しかし、なんでこう、紹介する本はほとんどが絶版なんだw
これじゃアフィリエイトが入らないジャマイカ。




方程式といえば、もっとも馴染み深いのがいわゆる「代数方程式」だろう。
中学までに2次方程式とその解の公式までは学習する。
それ以上の高次になると、因数分解で解ける場合だけ、高校で習うことになる。

一般に、代数方程式には複素数まで含めれば解が必ず存在する。
(代数学の基本定理)
その個数は、重解(因数分解すると2回同じ数字が出る)もそれぞれ数えれば、
次数と同じ数だけ存在することが証明できる。

では、その解を見つける方法はあるのだろうか?
2次方程式のように、必ず解にたどり着く「必勝法」は存在するのか?
結論からいうと、3次と4次には解の公式が存在する。
つまり、かならず答えを出すことができる。

ところが5次以上の方程式には解の公式が存在しない。
それは人類が未だ見つけられていない、のではない
加減乗除と累乗根(ルートの計算)を組み合わせたのでは、
絶対に解をあらわすことができない場合が存在する。
つまり、5次以上の方程式には、解が必ずあるのが分かっているのに、
その解を見つける方法がないのだ。
(もちろん、計算機で数値的に近似値を出すことはできるし、
道具立てを広げれば(楕円関数というのを使うことになる)解の公式のようなものを作ることができる)
これはガロア理論として知られていて、
その過程で生み出された群論は、数学・科学のさまざまなところで使われている。

まとめると、方程式には、
1)解の存在:解があるのか?
2)解の個数:何個あるのか?
3)可解性:解く事ができるのか?
という問題がある。

前置きが長くなったが、この本で取り上げられているのは力学の問題なので、
これは微分方程式がテーマになる。

自分でも、たとえば「万有引力の3体問題は解析的に解けない」ということは知っていたが、
厳密にそれがどういう意味なのか、
逆に解けるとはどういうことなのか、ということを掘り下げて勉強したことがなかったので、
この本が最初に「解ける問題」としてケプラー運動を詳しく取り上げていたのは新鮮だった。
分かったつもりでいる分野でも、掘り下げるとまた新たな発見があって面白い。

微分方程式の場合、解についての問題は、
1)解の存在:解が存在するか?
2)解の一意性:解はひとつだけか?
3)可積分性:解析的に積分して、関数として書くことができるか?
というレベルに分けることができる。
2の部分が違うのは、これが力学の問題だということに関係している。
たとえば、惑星の運動についての方程式を考えているとき、
その答えが2つ以上あったら大変なことになる。
「明日の日の出の時刻は、午前6時35分か、あるいは、午前6時28分のどちらかです」
みたいなことはないはずだ。
ある程度大きなレベルの(日常レベル以上、と思ってもらっていい)ことは、
その結果は一つしかないはずで、それが「一意性」の要請になっている。


この本でのメインテーマは、3の「可積分性」にある。
力学の問題なので、1と2は満たされているようなものを題材にしているが、
さて、それが実際、どのような運動になるのかを、関数の形で書き下すことができるのか?
という問題について考えていく。
解ける問題は、必要な個数の「第1積分(保存量)」が存在する。
だが、解けない問題は、それが足りないのだ。

では、与えられた方程式が、解けるか解けないか、判別する方法あるのだろうか?
それがこの本の後半のテーマになる。
ポアンカレの可積分性について大きな仕事や、
カオスなどを勉強すれば必ず名前がでてくるエノンの仕事について、
それが力学系の振る舞いを調べる上でどう重要なのか、
この本を読んで、いくつかの話の連関が理解できたのはよかった。
ちょうどルンゲ・クッタ法で3体問題を計算するプログラムを作っているところで、
それは地球や月の位置を正確に計算したいという目的からだったが、
そういう計算物理の別の側面を見ることができたのは収穫だった。

最後の章は、積分できる場合をリストアップすることができるか?
というのがテーマ。
ここで、超幾何微分方程式(量子力学などでよく見るやつの親戚、あれは「合流型」といわれる)が、
解析的に解ける条件を探っていく。
その中で、多面体の分割を球面へと射影した図形(球面三角形)との関連が出てくるあたり、
解析・代数・幾何の美しいコラボを見た気がした。
こういった分野は微分ガロア理論というらしい。
代数的な計算だけでなく、微分や積分といったものを取り入れていける辺りが、
計算を抽象的なルールとして考える群論の本領発揮というところだろうか。


計算の細部は飛ばして読んだが、全体として簡潔すぎると感じつつも、
この分野の流れと、その美しい結果について分かりやすく解説しているという点で、
このシリーズの目的を充分達成していると思った。
薄い本であるし、途中作者の言い訳みたいなページもあって面白いので、
ぜひ古本屋か図書館で探して読んでみてほしい。
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