CUDA+GPGPU、C++、C#などのプログラムについての備忘録がわり
Posted by サンマヤ - 2013.04.10,Wed
今回は、四元数の続きということで、本の紹介です。
堀 源一郎「ハミルトンと四元数」
堀 源一郎「ハミルトンと四元数」
WEBサイトの記事で四元数について書いてから、いくつか気になっていたことがあります。
1つ目は、ハミルトンが四元数を作ったときに、どういう経緯でそれに至ったのか。
2つ目は、四元数とディラック行列が同じ、と書いてしまいましたが、
実際は四元数の大きさが、
という普通の三平方の定理型(いわゆる球面型)の式になるのに対し、
ディラック行列は、
というミンコフスキー型(あるいは双曲型)になるという違いがあります。
その点をどう考えるのかというのをぼやかしたままなのです。
(それで13章が未執筆のままになっています)
今日の記事は、1つ目の点に関連します。
サイトの記事
「第9回:x^2+y^2+z^2は因数分解できるか」
では、因数分解の観点から四元数を導入しました。
堀氏の「ハミルトンと四元数」によれば、
ハミルトンは3次元のベクトルを代数で表すことのできる体系を探していた、
とくに「積の絶対値」が「絶対値の積」になることを条件に四元数にいきついた、
ということでした。
絶対値を問題にするのは、幾何学的な目的に必要だからです。
ただ、因数分解の観点も、結局絶対値に結びつくので
あながち遠い話ではないとは思っています。
これについては、そのうちWEBサイトにも反映させたいと思っています。
この本の目次を海鳴社のサイトから引用します。
●目次:
(第I部)ハミルトン
第1章・ハミルトンと四元数
第2章・四元数の発見
第3章・ハミルトンと現代物理学
(第II部)四元数とその性質
第4章・ベクトル
第5章・四元数の導入
第6章・四元数の記法
第7章・四元数のいろいろな性質
第8章・四元数のベクトル代数への応用
第9章・四元数のベクトル解析への応用
第10章・ナブラ
第11章・ベクトルのベキとeのベクトルベキ
第12章・四元数の行列表現
(第III部)四元数の応用
第13章・平面幾何学
第14章・正多面体
第15章・平面三角法と球面三角法
第16章・質点系の力学
第17章・剛体の力学
第18章・幾何光学
第19章・ローレンツ変換
歴史的なところは最初の3章だけで、あとは四元数の性質と応用に充てられています。
とくに第3部の応用編はほかではなかなか見られない内容なので一見の価値があります。
ただ、普段、ベクトルや座標系での表記になれている立場からみると、
四元数を使うことが本当に分かりやすいのか疑問でした。
いくつかの幾何の定理などは、複素数や四元数を使うと見通しがよくなるのは分かりました。
とくに9点円やモーリーの定理、正多面体などの議論は参考になりました。
しかし、著者の専門である天体力学(第16章など)は、
どうしても頭の中でふつうの微分方程式での表記に直して理解しようとしてしまい、
読むのに苦労しました・・・
ただ、この本からの四元数以外の発見として、
ハミルトンの解析力学とも関連して、
3体問題を含む微分方程式の積分可能性への言及は興味深い点でした。
(これもわざわざ四元数でやるべき話かといえば、微妙ですが)
最後のローレンツ変換はまさに自分が一番知りたかったところです。
ここは計量の形がちがうところを四元数に含まれない新たな負の平方根を導入することで処理していました。
この点については、もう1冊、本を読んでいる途中です。
(こちらはこの本以上にもっと難解で、読みこなせるか自信がありません)
全体を通して、四元数に関心のある方は、一度目を通す価値があると思います。
四元数が作る世界がどのようなものか、分かると思います。
ただやはり、四元数を使うことが問題を簡単にするとは限らない、という感想も持ちました。
問題によってどのような道具立てを用いてアプローチするのか適切に選ぶ、
ということの、当たり前のようでいて難しい面を改めて感じました。
四元数への「慣れ」の問題もあるのでしょうが。
この本だけではないのですが、いくつかのきっかけで、いま幾何学にはまってます。
ユークリッド幾何から、双曲幾何などの非ユークリッド系の幾何、
そして微分幾何に至る幾何学の基本を抑えておきたいと思ったのです。
これは四元数とディラック行列の違いを考える上でも重要です。
中学生を対象に授業を持っていて、図形の苦手な生徒さんが多いというのも、
幾何への適切な入門とはどういうものか、という関心が最近のテーマになっています。
これについては、WEBサイトの方で扱っていきたいと考えています。
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Comments
Re:無題
コメントありがとうございます。
ぜひ読ませていただきます。
ぜひ読ませていただきます。
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